お酒をインターネット上で売るための方法-通信販売酒類小売業免許

お酒をインターネット上で売るための方法

お酒を販売するためには、税務署に申請をして、事前に免許を取得する必要があります。
お酒の販売免許には酒類小売業免許と酒類卸売業免許があって、小売業免許はさらに一般酒類小売業と通信販売小売業について分類することができます。

今回は、お酒の販売免許の中でも、インターネットやフリマアプリ、オークションサイトなどで販売をするために必要な免許について、解説をしていきます。
ECサイトを通じて海外にお酒を販売したい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

目次

通信販売酒類小売業免許の概要

1.通信販売酒類小売業免許でできること

酒類の小売業免許は、エンドユーザーに対して直接、あるいはエンドユーザー向けにお酒を飲ませる目的で提供している事業者向けに販売するときに必要になります。

小売業免許はさらに一般酒類小売と通信販売酒類小売の2つに分類できます。
そのうち、通信販売酒類小売業免許については、以下のように定義されています。

通信販売酒類小売業免許とは、通信販売(2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容、販売価格その他の条件をインターネット、カタログの送付等により提示し、郵便、電話、その他の通信手段により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う販売をいう。)によって酒類を小売することができる小売業免許をいう。

この中の「カタログの送付等」とは、カタログの郵送以外に、備置き、チラシ等の新聞折り込みや雑誌・新聞への広告、テレビ放送の利用等の広い手段のことを指します。
また、「通信手段」とは、郵便、電話機、パソコンやスマートフォンを利用する方法、あるいは電報、預貯金口座に対する払込みのことを言います。
2以上の都道府県にまたがる消費者や飲食店等を対象にして、店頭小売以外の方法で酒類の注文を受注するようなときには、通信販売の酒類免許が必要となります。

要約すると…

通信販売酒類小売業免許は、
①2以上の都道府県にまたがる消費者等を相手にして
②インターネット上で酒類の販売
を行うことができます!

2.通信販売酒類小売業免許が必要な人

通信販売酒類小売業免許は、次のようなときには免許取得が必要です。

①一般ユーザー向けに酒類を販売するネットショップを経営したいとき
②飲食店等から電話で酒類の注文を受けている酒問屋が、県境をまたいで顧客獲得するとき
③海外から酒類を仕入れて、ネットオークションで販売をするとき

このような場合には、営利目的であっても非営利であっても、事前に通信販売酒類小売業免許を取得する必要があります。

逆に、通信手段による販売であっても、顧客の対象地域が1の都道府県のみの場合は、一般酒類小売業免許を取得する必要があります。

免許取得のための条件

1.人に関する条件

酒税法の第10条には、免許を取得するために該当してはいけない条件が記載されています。
法律上はかなり細かく記載されているので、ここではかいつまんだ説明をいたします。
詳細な、あるいは正確な説明については、税務署の手引きや専門家へご相談ください。

まずは、人に関する条件についてです。

①免許の申請者が、過去に酒類免許(製造/販売)を取消されて3年経っていない場合
②過去に酒販免許を持っていた法人が免許を取消された場合で取消しの原因になった事実があった日以前の1年以内に法人の役員だった人が、その免許が取消されて3年経たずに免許申請した場合
③免許の申請者が、申請前2年以内に国税or地方税の滞納処分を受けている場合
④免許の申請者が、酒税法関連法令の規定で罰金を受け、または関税法等の規定で通告処分を受け、3年経っていない場合
⑤免許の申請者が、刑法等の規定で罰金を受け、3年経っていない場合
⑥免許の申請者が、禁錮以上の刑を受け、3年経っていない場合
⑦免許の申請者が未成年者で、未成年者の法定代理人が②、④~⑥に該当している場合
⑧免許の申請者が法人で、法人の役員が①、②、④~⑥に該当している場合
⑨免許の申請者が、①、②、④~⑥に該当している人物を販売場の支配人にしようとしている場合

要約すると…

免許申請の関係者に、過去に免許を取り消されたり、法令違反や税金の滞納をしていると、申請できません!

2.場所に関する条件

酒税法の第10条第9号に、免許を取得するための場所に関する条件が記載されています。

正当な理由がないのに取締り上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合

具体的には、以下のような場合には免許を取得することができないということになります。

①申請をする販売場が、既に酒類免許を取得している製造場や販売場、あるいは消費者に酒類を飲料用として提供する居酒屋や飲食店同一の場所にある場合
②販売場の区画割り、専属の販売従事者の有無、代金決済の独立性その他販売行為において他の営業主体の営業と明確に区分されていない場合

3.経営基礎に関する条件

酒税を納めるための経営基盤がしっかりしていないと免許を取得することができない、という趣旨の経営基礎に関する条件です。
酒税法の第10条第10号に記載されています。

酒類の販売業免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合

破産者で復権を得ていない場合
現在も国税や地方税を滞納している場合
③申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けている場合
④酒税に関係のある法律に違反して通告処分を受け、それを履行していない場合orそれにより告発されている場合
⑤販売場が、建築基準法や都市計画法等の規定に違反していて、除却や移転を命じられている場合
⑥販売場で、酒類の適正な販売管理体制が構築されないことが明らかであると見込まれる場合
最終事業年度の貸借対照表の繰越損失が、資本等の額を上回っている場合
最終3事業年度のすべての事業年度で、資本等の額の20%を超える額の欠損が生じている場合

⑦と⑧の資本等の額は、貸借対照表上の「資本の部」の数字を使って計算します。
具体的には、
Ⓐ資本金」+「Ⓑ資本剰余金」+「Ⓒ利益剰余金」ー「Ⓓ繰越利益剰余金
が、「Ⓔ資本等の額」となります。
⑦については、最終事業年度の貸借対照表上、Ⓓ<0の場合で、Ⓓ>Ⓔとなる状態です。
一般的には「債務超過」と言ったりもします。
⑧については、過去3事業年度分損益計算書上、当期純損失が計上されている場合で、各事業年度のⒺを計算して、当期純損失の金額がⒺ×20%を毎年超えている状態です。

⑨経験やその他の事項を考慮して、適正に酒類小売業を経営するための十分な知識や能力を認められる者又はこれらの者が主体となって組織する法人であること
⑩酒類の通信販売を行うための必要な資金があり、販売方法が特定商取引法の消費者保護関係規定に準拠しており、未成年者の飲酒防止に関する表示基準を満たし、または満たすことが確実であると見込まれること
酒類の購入申込者が未成年者でないことを確認できる手段を講ずるものと認められること

⑨については、一般小売業の免許とは異なり、従事経験●●年といった明確な基準は設けられておりませんので、実務経験がない場合でも、酒類販売管理者の講習を受けることで条件を満たすことが可能です。

①~⑧の事項については、これに該当していないこと。
⑨~⑪の事項については、これらの条件を満たしていること。

という基準で免許付与の妥当性を判断することになります。

要約すると…

酒販免許は税金の確実な徴収が目的なので、資金繰りや決算面で不安がある事業者には免許が出ない可能性があります!
また、通信販売という性質上、未成年者が酒類を購入しないための仕組みづくりも要求されております。

4.需給調整に関する条件

これは分かりやすく言うと、免許付与の判断については大人の事情が存在します、ということです。
酒税法の第10条第11号に記載されています。

酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合

通信販売免許を取得する条件として、一定の酒類については販売することができないという需給調整がなされています。
具体的には、国産酒類のうち
①カタログ等の発行年月日の属する会計年度の前会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が、全て3000キロリットル以上である製造者が製造、販売する酒類
②地方の特産品等を原料として、特定映像者以外の製造者に製造委託する酒類であり、かつ当該酒類一会計年度における製造委託者ごとの製造委託数量の合計が3000キロリットル以上である酒類
については通信販売による方法では取り扱うことができない、ということになります。

ちょっと何言ってるか分からないよ…
という方もたくさんいらっしゃると思います。
これは言い換えると、年間出荷量(課税移出数量)が3000キロリットル以上のお酒については、通信販売できないということです。
年間出荷量3000キロリットルがどれくらいかというと、大手メーカーのビール等については、まず販売できません。
また、コンビニなどで見かけるようなお酒も通販で取り扱うことは難しいと言えます。

なので、地方や中小零細の蔵元やワイナリー、ブルワリーが製造したものについて、販売できるということになるのです。
販売したい酒類を製造しているメーカーに、通信販売できる酒類である旨の証明書(課税移出数量証明書)を出してもらう必要があります。

なお、輸入酒については出荷量制限はありませんので、好きなメーカーの酒類を販売することができます。

要約すると…

通販免許は販売できるお酒に制限アリ
国内大手メーカーの酒類は販売できないと思うべし。

免許取得手続の流れ

ここからは、酒販免許を取得するまでの一般的な流れを解説いたします。

1.事業計画の整理

酒類免許申請に当たっては、販売場所在地を所轄する税務署を担当する酒類指導官がおり、この酒類指導官との事前相談のために、酒類販売業を行うにあたっての具体的な事業計画を整理します。
仕入れ先はどうするのか、販売顧客はどこを想定しているのか。
販売元の蔵元や海外メーカーから承諾書や証明書を貰うことができるのか。
取り扱う酒類や、販売場の設置予定場所。
これまでの酒類製造や販売に携わった経歴等々、免許取得のために必要な条件に照らし合わせて、必要な情報を整理しましょう。

2.税務署への事前相談

事前に予約をして、担当の酒類指導官宛に事前相談を行います。
ここで、ある程度事業計画が固まっていれば、申請に出して問題ないかどうか、指導官に判断してもらえます。
諸般の事情で免許を付与できないということもあるかもしれませんので、必ず事前相談を受けるようにしましょう。
この段階で申請に進めるとお墨付きを貰えれば、よほどのことが無い限り免許が付与されないということはありません。

3.申請書類の作成

免許申請に向けて、必要な書類の作成に入ります。
それぞれの申請者のご事情により準備する書類も変わってきますので、必要に応じて酒類指導官のアドバイスを受けるか、あるいは酒類販売免許申請の専門家に依頼をしてみましょう。

4.免許申請と審査

申請に必要な書類が揃ったら、販売場所在地を管轄する税務署に申請書類を提出します。
仮に提出時に書類が不足していることが明らかな場合は、その場では受け取ってもらえず、全て資料をそろえてから提出させられることが一般的です。
また、窓口で無事に受け取ってもらえたとしても、書類に不足があるような場合には、一切審査されませんので、速やかに不足書類を補完する必要があります。

審査は書類を受け付けた順番で行われますが、一度補正や追加書類の提出があると、その段階で審査が完全にストップします。
一般的には審査が終了するまで2ヶ月と言われていますが、これは何も補正等が無い場合の標準期間になりますので、補正等で審査がストップすれば、それだけ審査期間が長引くことになります。

審査上必要があれば、追加の書類提出や販売場の現地確認を要求されることは十分にあり得ます。
適切な対応をしないことにより免許を付与されないということもありますので、こういったことをお願いされたときには快く対応するようにします。

5.免許の付与

審査の結果、免許が付与される場合も、付与されない場合も、税務署から通知書面を受け取ります。
免許が付与された際には、登録免許税として、販売場1箇所につき3万円を納付する必要があります。
登録免許税を支払い、その領収書を提出したうえで、免許通知書を受け取ることになります。

必要な費用

通信販売酒類小売業免許の申請にあたって、免許が付与された際に、免許1件(販売場ごと)につき3万円の登録免許税を納付する必要があります。
酒類販売免許は、販売場所ごとに免許が出る仕組みになっているので、たとえば同一法人で複数場所を同時に申請したとしても、申請場所ごとに登録免許税を納付しなければなりません。

その他、酒類の仕入れや在庫の確保、販売場の賃貸まで考えると、数十万円~100万円程度のキャッシュは抱えていた方が、事業継続をしていくという意味では安全運転できるかと思います。

なお、通信販売酒類小売業免許の申請手続を弊所にご依頼いただく場合は、下記のとおりです。

手続内容料金(税込)備考
初回相談(30分~1時間)無料メール/Web会議可
通信販売酒類小売業免許申請手続165,000円別途登録免許税30,000円

まとめ

今回は通信販売酒類小売業免許の全体像について解説してきました。
ECサイトなどで海外向けにお酒を販売したい場合については、以下の記事もご参照ください。

酒類販売免許は、申請すれば誰でも免許を取得できるものではなく、事業計画や資金繰り、これまでのご経歴によってその可能性が変わってきます。
通信販売免許は特に最近増えてきておりますが、輸入酒を販売するために、税務署の手引きに無い書類を要求されたり、手続き上の落とし穴がいくつもあります。

当事務所では、免許取得に向けたご相談対応や申請手続はもちろん、免許取得後の事業運営についてもアドバイスをさせていただくことが可能です。
酒販免許申請について、疑問に思ったことやご不安なこと、まずはご相談してみてはいかがでしょうか?
初回ご相談は無料です。

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