今回は、当ブログを閲覧してくださった方の中でも特にお問い合わせが多い、
ECサイト等で海外向けにお酒を売るためには、どんな免許を取ったらいいのか?
という内容について詳しく解説いたします。
お酒を売るための免許について理解する
まずは、お酒を売るために必要な免許について、前提知識を共有します。
お酒の販売免許は、税務署が酒税という税金を正しく徴収するために設けられている制度のため、きちんとした法律知識を入れることが必要です。
それでは、さっそく見ていきましょう!
酒類販売免許とは何ぞや
法律上の条文
酒類販売の免許については、酒税法という法律の第9条にその根拠が置かれています。
酒類の販売業…をしようとする者は、政令で定める手続きにより、販売場…ごとにその販売場の所在地…の所轄税務署長の免許…を受けなければならない。ただし、酒類製造者がその製造免許を受けた製造場においてする酒類(当該製造場について…製造免許を受けた酒類と同一の品目の酒類…に限る。)の販売業及び酒場、料理店その他酒類をもっぱら自己の営業場において飲用に供する業については、この限りでない。
酒税法第9条第1項
細かな定義
酒類
酒類とは、アルコール度数が1分(1%)以上のものでそのまま飲むことができるものを指します。
また、水などを加えてアルコール度数1分以上の状態で飲むことになる、粉末状のものも酒類です。
酒類の販売業
酒類の販売業とは、継続的に酒類を販売することいいます。
営利目的かどうか、販売相手が特定か不特定かは関係ありません。
製造場においてする酒類の販売業
酒税法には、酒類の販売免許意外に酒類の製造免許制度も定められています。
いわゆる、酒蔵やワイナリー等がお酒を造るために必要な免許です。
この酒類の製造免許を取得した製造者が、免許を取得した製造場で、免許を取得した酒類と同一品目の酒類を継続的に販売することを、製造場においてする酒類の販売業といいます。
販売場
販売場は、たとえば
①建物のテナントとして酒類の販売業をする際には、そのテナントとして借りている区画
②駅構内の売店等で酒類販売をする際には、各プラットホームや駅ごとに決められている売店等の区画
③運行する列車内や船舶内等で酒類販売をする際には、この列車内や船舶内等
を販売場として取扱うことになっています。
酒類販売免許が不要なケース
先に確認した酒税法第9条では、酒類販売免許が不要なケースについても記載があります。
酒類製造者がその製造場においてする酒類の販売業
定義のところで確認をした「製造場においてする酒類の販売業」については、酒類販売業の免許は不要です。
ただし、仮に製造者が製造場で酒類を販売する場合でも、その製造場から移出する酒類ではないものを販売するときには、別途酒類販売業の免許を取得することが必要です。
具体的には、たとえばワインの製造者がその製造免許を取得した製造場付近に蔵置所を設置して、その蔵置所内に蔵置している輸入ワインを販売するときには、別途販売業の免許が必要となります。
自己の営業場で自己の飲用に供する業
飲食店やバーなど、お客さんなどに飲んでもらう目的で酒類を提供している店舗についても、販売業の免許は不要です。
しかし、その店舗外の場所で飲用されることを分かりながら、酒類をその店舗内で継続して販売する場合には、酒類の販売業免許が必要です。
また、店舗内で酒類を提供する際には、例えば缶や瓶等をそのまま提供する場合であっても、必ず開栓した状態で提供する必要があります。
事業計画をはっきりさせる
ここまで少し小難しい話でしたが、いよいよここから本題です。
ECサイトで海外向けにお酒を販売する場合にどんな免許が必要になるのか、ということを検討するためには、具体的なビジネスプランをはっきりさせる必要があります。
そのプラン次第で、どのような免許が必要になるかが変わってきます。
そのポイントとなるところを見ていきましょう。
誰にお酒を売るのか
まず、誰に対してお酒を売るのか、というところを明確にする必要があります。
海外向けとはいっても、海外の個人客が相手なのか、飲食店向けなのか、はたまた現地のインポーター(輸入業者)向けなのか、というところです。
個人客、飲食店向けに販売する場合
ECサイトを経由して、海外の個人消費者や飲食店向けに輸出をしたい場合、必要になる免許は通信販売酒類小売業免許です。
現地インポーター向けに販売する場合
海外のインポーター等の流通業者向けに輸出をする場合、輸出入酒類卸売業免許が必要となります。
個人にも流通業者にも輸出販売をする場合には、両方の免許を取得する必要があります。
どんなお酒を売るのか
誰に対して、という部分を整理したら、次に「どんなお酒を売りたいのか」を検討する必要があります。
通販免許の場合、販売できるお酒の酒類には制限があるため、注意が必要です。
年間出荷量が3000kl以上の国内酒類
正確には、カタログ等の発行年月日の属する会計年度の前会計年度における、酒類の品目ごとの課税移出数量(年間出荷量)が、1つでも3000キロリットル以上である製造者が製造・販売する酒類については、通信販売免許を取得して販売することができません。
酒類の品目ごとの課税移出数量が、1つでも3000キロリットル以上だと販売できないということは、例えばウイスキーと焼酎の製造免許を取得した製造者がいたとします。
ウイスキーの課税移出数量が2000キロリットルだったとしても、焼酎の課税移出数量が3000キロリットルの場合、この製造者が製造販売している酒類はウイスキーであっても焼酎であっても通信販売できないということになります。
3000キロリットルというとイメージがわきにくいかもしれませんが、テレビCMで見かけるようなメーカーの酒類は通信販売できない、と思って頂ければ良いかと思います。
このような大手メーカーの酒類販売をしたい場合は、平成元年以前に酒類販売免許を取得した事業者を買収するか、海外の流通業者向けに販売をするという方法になります。
年間出荷量が3000kl未満の国内酒類
裏を返すと、課税移出数量が3000キロリットル未満の国内種類については、通信販売免許を取得できる可能性があるということです。
その場合、その酒類製造者から、通信販売の対象となる酒類である旨の証明書を発行してもらう必要があります。
一般的には地ビールや地ワインなどを作っている酒類製造者の酒類は該当する可能性が高いですが、コンビニや量販店で見かけるようなものについては、大手メーカーでなかったとしても課税移出数量が3000キロリットル以上になっているかもしれませんので、注意が必要です。
いずれにせよ、通信販売でこうした酒類を扱いたい場合は、それぞれの製造者に個別で確認をする必要があります。
輸入酒類
輸入酒類については、通信販売する際の制限はありません。
輸入した酒類を再度国外に輸出する意味があるのかについては、検討が必要です。
どのようにしてお酒を売るのか
今回はECサイトで海外向けに、ということが前提になっているので、あまり考慮は必要ないかもしれません。
通信販売免許を取得する場合、2の都道府県以上の顧客を対象に販売する、という制約がついています。
したがって、特定の1つの都道府県が顧客対象の場合は、通信販売免許を取得できないことになります。
たとえば、お客さんにカタログを配って電話やFAX、メールで注文を受けて配達するようなスタイルの酒屋さんは、特に注意が必要です。
ECサイトを用いて海外向けに販売する場合、
①自社サイトを構築する
②他社ECサイトにテナント出店する
という2つのパターンが考えられます。
他社ECサイトを利用する場合、それぞれのサイトで酒類販売対応についてガイドラインなどが示されていることが多いため、そういったものを参照されると良いでしょう。
①自社サイトを構築するような場合には、お酒の年齢表示や購入制限の措置を設ける必要がございます。
また、実務上でいうと、輸出先国によって、さまざまな物品の輸入規制が行われているため、それらを踏まえた上で業務フローを構築する必要があるでしょう。
酒類販売業免許を取得するまでの流れ
酒類販売業免許を取得するまでのおおまかな流れは以下のとおりです。
- 販売対象顧客や販売予定物品等の事業計画をまとめる
- 販売場の所在地を管轄する税務署を管轄する酒類指導官がいる税務署に相談する
- 必要書類の作成、収集をする
- 酒類販売管理者研修の予約・受講(営業開始前までに済ませておく)
- 税務署へ申請書類を提出する
- 審査結果が出るまで待つ(標準処理期間:約2か月)
- 免許通知書の交付、登録免許税の納付
- 営業開始
通販免許や輸出入卸売免許の個別の解説については、下記記事もご参照いただければ幸いです。
免許取得手続でご不安な方は当事務所にお任せください
酒類販売業免許の手続について、自分で手続できるだろうか、税務署に行くのが不安である、というようにもしご不安に思われることがございましたら、ぜひ当事務所を頼っていただければと思います。
お客様とのご相談から、税務署への事前相談対応、そして書類作成や提出代行まで、お手伝いさせていただきます。
当事務所にご依頼いただく際の流れ
- 初回ヒアリングで情報整理
- 当事務所からお客様へ着手金のお見積りをご提示
- お客様から当事務所へ業務のご依頼
- 当事務所からお客様へご請求書・ご契約書のの送付
- ご請求金額のお振込み・契約書へのサイン
- 当事務所がヒアリング情報を元に税務署と事前相談、最終的に必要な免許の確定
- 当事務所から必要な免許に応じたご請求書を送付
- 当事務所からお客様へ、収集・作成にご協力いただく書類のご提示
- ご協力いただいた書類を元に、当事務所で申請書類の作成
- お客様による酒類販売管理者研修の予約・受講(営業開始までに)
- 管轄税務署へ申請書類の提出
- 提出書類の審査(標準処理期間:約2か月)
- 免許通知書の受領、登録免許税の納付(原則、お客様に税務署まで出向いていただく必要がございます)
- 営業開始
当事務所の報酬設定
当事務所に業務をご依頼いただく場合の報酬目安は、以下のとおりでございます。
業務内容 | 報酬額(税込) |
---|---|
初回相談(メール/Webミーティング) | 無料 |
税務署への事前相談対応 | 55,000円 |
通信販売酒類小売業免許 | 110,000円(別途登録免許税30,000円) |
輸出入酒類卸売業免許 | 143,000円(別途登録免許税90,000円) |
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