インバウンドが盛り上がっているし、自社でも旅行ツアーを組んでみたい。
だけれど、そもそもどんなビジネスが旅行業になるのか?
そんな疑問をお持ちの事業者様も多いと思います。
今回は、法律上の旅行業の定義や、そのような規制が存在する理由について解説していきます。
※個別の案件が旅行業に該当するかどうかの確認は、観光庁へお問い合わせください。
旅行業法の目的
まずは、旅行業についていろいろなルールが書いてある法律を「旅行業法」といいます。
世の中の旅行会社はこの旅行業法に定められていることを遵守して事業を行うことになります。
旅行業法の第1条にはどんな目的でこの法律が決められたのかということが書いてあります。
旅行業法 第1条(目的)
この法律は、旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進することにより、旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の促進を図ることを目的とする。
特に大事なのは後半部分です。
この部分に、この法律が達成したい3つの目的が書かれています。
①旅行業務に関する取引の公正の維持
②旅行の安全の確保
③旅行者の利便の増進
この目的を達成するために様々なルールが決められている、というのが旅行業法の大枠です。
どうしてこのような目的が置かれ、ルールが決められているのか。
それは、旅行業法という法律が「消費者保護」のための法律だからです。
ここでいう消費者とは、「旅行者」のことです。
旅行というビジネスは、一度に不特定多数の人を様々な場所へ輸送するため、何かトラブルが起きると被害が拡大しやすい傾向にあります。
例えば、「てるみくらぶ」の破産や、イギリスの旅行会社「トーマス・クック」が破産したニュースは記憶にも新しいかと思います。
旅行会社が旅行者から料金だけ先に受け取っていて、手配が完了していない状態で破産してしまった場合。
旅行先で旅行者は宿に宿泊することができず、帰りの飛行機のチケットも無い。
旅行会社のお客様問い合わせ先に連絡をしても、繋がらない。
このようなトラブルを少しでも減らし、徹底した消費者保護を図るために、旅行会社に対して様々な規制をかけているのです。
法律上の旅行業
それでは、旅行業法の目的を確認したところで、いよいよ旅行業の定義について解説をしていきます。
旅行業のポイントは3つです。
①報酬を受け取ること
②一定の行為を行うこと
③事業であること
です。
1.報酬を受け取ること
報酬は、事業者が②の一定の行為を行うことによって「経済的収入」があればよいというのが、行政の解釈です。
たとえば旅行者のために無料でホテルを手配したとしても、ホテルから紹介料等の名目でキックバックを受け取っている場合には、報酬を受け取っている(経済的収入がある)ということになります。
2.一定の行為を行うこと
一定の行為とは、法律上は基本的旅行業務と付随的旅行業務に分けられます。
付随的旅行業務は、名前の通り基本的旅行業務に付随して行われる業務で、旅行業の登録が必要となるのは、基本的旅行業務を扱う場合です。
基本的旅行業務とは、以下の4つが該当します。
(1)旅行参加者を募集するために旅行計画を作成し、旅行の実施に必要なバスや航空機、宿泊施設との予約・契約を行う
(2)旅行予定者から依頼を受けて旅行計画を作成し、旅行の実施に必要なバスや航空機、宿泊施設との予約・契約を行う
(3)旅行者から依頼を受けて、バスや航空機、宿泊施設の予約・手配を行う
(4)旅行に関する相談に応じる
報酬をもらって、(1)~(4)の基本的旅行業務を行い、それが事業としての活動であれば、旅行業の登録が必要になります。
3.事業であること
それでは、事業であるとはどういうことなのでしょうか。
一般的には、不特定または多数の人を相手に、継続的あるいは計画的に旅行業務を行うことを広告・宣伝しているような場合であれば、それは事業といえます。
たとえば、観光地でたまたまタクシーが観光客を乗せて宿泊施設へ運ぶ行為については、「たまたま」観光客を乗せただけですので事業には当たらず、旅行業の登録は不要ということになります。
一方で、店舗を構えて旅行業務を行う旨の看板を出したり、旅行の手配を行う旨の宣伝・広告が日常的に行われているような場合は、反復継続性が認められて、事業とみられます。
旅行業の登録が不要なケース
一見すると旅行業に該当しそうでも、旅行業の登録が必要ないケースがあります。
1.運送機関の代理行為のみを行う
たとえば航空運送代理店として、航空会社の代わりに飛行機のチケットを発券する場合や、バスの回数券販売などがあります。
2.バス会社や宿泊施設が自ら行うツアー
バス会社が自社バスを利用して日帰りツアーを行う場合や、ホテル等の宿泊事業者が現地でアクティビティ販売をする場合には、旅行業の登録は不要です。
ただし、バス会社を運営するためには旅客自動車運送事業の許可が、宿泊施設を運営するためには、旅館業や住宅宿泊事業といった、旅行業とは別のライセンスがそれぞれ必要です。
3.運送・宿泊以外のサービスのみを提供する場合
運送・宿泊以外のサービスとは、レストランでの食事や遊園地への入園があります。
先ほど説明した「付随的旅行業務」に該当します。
こういった施設への予約や入場券購入だけを行う場合には、旅行業の登録は不要です。
まとめ
旅行業法には、この他にも旅行業者代理業や旅行サービス手配業の定義もありますが、今回は旅行業の定義に限定して解説をいたしました。
個別の案件ごとに旅行業の登録が必要かどうかについては、観光庁観光産業課の旅行業担当にご確認されることをお勧めいたします。
ご確認されたうえで、旅行業の登録が必要であれば、当事務所にて登録のお手続きや、開業後のサポートをさせていただきます。
登録のお手続きについては、ぜひお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
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