新型コロナウイルス感染症の影響により苦境に立たされている飲食店向けに、酒類販売免許の特例措置が出されました。
飲食店に限らず、物販店等でアルコール類を販売するためには酒類販売の小売業免許が必要です。
今回、新型コロナウイルス感染症の影響で、飲食店が店舗内の在庫酒類を販売するためにこの免許を受ける場合に、手続の簡素化や免許処理の迅速化を図る観点で、通常の酒類小売業免許とは別に期限付酒類小売業免許が新設され、この免許を受けることができるようになりました。
本記事ではこの期限付酒類小売業免許について必要な書類や手続きの流れについて解説をしていきます。
なお、現在国税庁の方でも詳細を決めながら制度を運用しているため、随時必要な書類等の情報が更新される可能性がありますので、その点はご留意ください。
申請にあたって必要な情報は、後掲の国税庁ウェブサイトに記載がございます。
また、QAページも公開されておりますので、そちらもご参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/kansensho/pdf/0020004-088.pdf
弊所では免許申請手続のサポートも行っておりますので、手続についてのご依頼を検討される場合は、下記お問い合わせフォームよりご連絡お待ちしております。

目次
酒類販売免許の概要
酒類販売免許の概要については、下記記事をご参照ください。

大雑把に言うと、酒類販売の免許には
①小売
②卸売
の2種類が存在します。
一般消費者向けに酒類の販売をするためには、小売業の免許を取得する必要があります。
今回の飲食店向けの期限付免許は、小売業免許の特例ということになります。
1.通常の酒類小売業免許の概要
通常の酒類小売業免許の概要については、下記記事をご参照ください。

酒類販売業の免許は「販売場ごとに」申請をする必要があります。
ですので、もし複数店舗経営されている飲食店の方は、店舗ごとに今回の特例申請をすることになります。
申請先は、店舗の住所地を管轄する税務署となります。
税務署の窓口については、下記をご参照の上、各税務署窓口にお問い合わせください。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/sodan/index.htm
2.期限付酒類小売業免許の概要
そもそも何ができるようになるのか
期限付免許を取得することで、店舗内在庫のお酒&既存の仕入先から仕入のある酒類の販売をすることができるようになります。
お酒の販売方法は、店頭or配達での販売が可能です。
店頭販売は、未開栓のボトル、お客さんがボトルキープしているボトルをそのまま、といったことが可能です。
公表はされていないですが、税務署や国税庁の担当部署曰く、お客さんが持参した容器に、お客さんが希望する量を注いで量り売りすることも可能だそうです。
免許申請前に担当の税務署で必ず確認をするようにしてください
配達による販売は、店舗が存在する都道府県内のエリアに限定されます。
インターネット経由で注文を受けて都道府県をまたいで配達するような場合は、通信販売による酒類小売業免許の取得が必要になります。

特例免許でできないこと
特例免許を取得してもできないことがあります。
①店舗内でボトルの中身を事前に別容器に小分けして、販売すること
⇒詰め替え販売の届出が必要になります。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/07/35.htm
②ネットショップ等で2都道府県以上のエリアを対象に販売すること
⇒通信販売酒類小売業免許の取得が必要です。
③既存の仕入先(酒屋)を飛ばして、直接卸売業者から仕入れること
免許を取得してもできないことがある点は、ご留意ください。
期限付きの特例免許である
今回の特例免許は、免許付与から6か月の期限が条件として設定されます。
今後の状況によって延長する可能性も考えられますが、原則更新はできないと思ってください。
免許を受けるためには申請日の締切に注意
この特例免許は、令和2年6月30日までに提出のあった申請に限って、処理がなされるとのことです。
免許申請を検討される場合は、まだ期限まで時間があると思わずに早め早めに行動された方が良いかと思います。
なお、申請後免許が付与されるまでは、税務署によってバラつきがありそうです。
概ね1週間から2週間程度あれば免許交付されるそうですが、申請状況によってはもう少し時間がかかる可能性も考えられます。
免許申請に必要な費用
通常、小売業免許申請には3万円の登録免許税の納付が必要です。
ただし、この特例免許の申請については、登録免許税は不要という取扱いになっています。
免許取得後に発生する義務
免許取得後には、通常の小売業免許業者と同様の義務が発生します。
具体的には、下記のとおりです。
①帳簿の記帳義務
②販売数量の報告義務
③酒類販売管理者の選任義務
小売業の帳簿記帳については、仕入れと販売それぞれについて、酒類の区別や種類ごとに、数量・価格・仕入/販売年月日の記載が必要です。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/qa/17/61.htm
販売数量の報告義務については、酒類の区分ごとに、どれだけの数量を販売したのかを、リットル単位で記載します。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/kansetsu/050825/pdf/01/CC1-5604.pdf
酒類販売管理者の選任については、一定の研修を受講することが必要です。
ただし、現在は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のためにすべての研修開催が中止となっております。
ですので、こちらについては後日開催されるものに参加をして、研修の受講証を提出するような対応となります。
期限付の特例免許は…
①販売したい店舗ごとに申請が必要
②店頭販売や配達はOK、ネット通販はNG
③量り売りはOK、詰め替えはNG
④有効期間は6か月間
⑤酒類販売管理者は後から研修受講
⑥登録免許税は不要
特例免許申請に必要な書類
1.申請時に必要な書類
申請時に最低限必要な書類が国税庁のウェブサイトに記載されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/kansensho/0020004-077.htm
①酒類販売業免許申請書
②販売業免許申請書次葉1(販売場の敷地の状況)
③販売業免許申請書次葉2(建物等の配置図(建物の構造を示す図面))
④住民票の写し【個人】/登記事項証明書【法人】
これらの書類を郵送で担当の税務署に提出することで、審査が行われて、免許が付与されることになります。
2.後日提出を求められる書類
特例免許申請では、あくまでも申請時の手続が簡素化されているだけなので、酒税法上の欠格要件などが緩和された訳ではありません。
ですので、納税状況や決算状況を後日税務署が確認をした結果、酒販免許の付与に値しないということになれば、免許は取り消されることになります。
後から追加提出を求められる書類についても国税庁のウェブサイトに記載されております。
①販売業免許申請書次葉3(事業の概要)
②販売業免許申請書次葉6(「酒類の販売管理の方法」に関する取組計画書)
③酒類販売業免許の免許要件誓約書
④施設の賃貸借契約書のコピー
⑤地方税の納税証明書
⑥その他税務署長が必要と認めた書類
税務署長が必要と認めた書類については、税務署ごとに異なる可能性があります。
例えば、法人であれば定款のコピーや、飲食店の営業許可証のコピーを求めてくるところもあるでしょう。
申請手続の流れ
1.申請書類の作成
まずは最低限提出を求められている書類の作成をします。
国税庁のウェブサイトの記入例を参考にしながら、各事業者様/各店舗の状況に合わせて作成してください。
2.申請書の提出
申請書は、郵送で提出してください。
また、提出先は店舗所在地を管轄している税務署宛です。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/sodan/index.htm
なお、申請に当たって事前相談をする際には、各税務署を管轄している「酒類指導官」がいる税務署でなければ対応できませんので、ご注意ください。
3.税務署からの免許付与
税務署に書類が到着した後、簡単な審査が行われます。
税務署によって免許付与までどれくらい時間がかかるかは分かりませんが、申請が集中することが予想される都市部の税務署では、1週間~2週間程度は見積もった方が良いと思われます。
4.添付書類の提出
免許がいったん付与された後、今度はその他添付書類の準備を進めます。
ご自身で申請をされる場合は、本記事で記載した書類以外に必要なものが無いか、積極的に税務署に確認をしてください。
追加書類の提出が無い場合や連絡がない場合、免許取り消しの可能性も出てきますのでご注意ください。
添付書類の準備ができ次第、再び郵送で管轄の税務署に提出をします。
5.免許確定/取消の確定
追加提出された書類の審査結果を踏まえて、最終的に免許が存続できるのか取消になるのかが確定します。
納税証明書を取得した結果滞納がある場合などは、免許を取り消される可能性がありますのでご留意ください。
手続をご依頼いただく場合の費用
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい店舗運営を迫られている事業者の皆さまの心中は心よりお察しいたします。
同じく事業を行っている私としても、何かお手伝いができればと思い、今回この解説記事を執筆させていただきました。
基本的には、ご自身でも行って頂けるような手続きにはなっておりますが、途中言及させていただきました通り、あくまでも「申請手続の簡素化」が図られたものであり、審査基準などが大きく緩和されたものではありません。
ですので、納税状況や決算書の数字によっては、仮に免許をいったん付与されたとしても、後日取消をされてしまう可能性もございます。
そうならないためにも、酒類販売免許手続に慣れている専門家の意見も取り入れられてみてはいかがでしょうか。
もし期限付酒類小売業免許のお手続をご依頼いただける場合の報酬については、下記の通りとなっております。
手続名 | 報酬(税込) | |
---|---|---|
業務御依頼時 | 着手金(申請書提出代行) | 22,000円 |
成功報酬(追加書類提出後) | 0円 | |
相談対応のみ | 申請に係るご相談 | 税務署へご相談ください |
少しでも、お困りの皆さまのためのお手伝いができればと考えております。
何から始めていいか分からない、お店のことに専念したい、そういった方はぜひ一度ご相談ください。
私たちも、利益度外視でご協力をさせていただきます。
手続についてのご質問やご依頼は、下記お問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。
何とか、一緒にこの苦境を乗り越えられることを願っております。
